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2024-04

国家と教会 Ⅱ

 前回の国家と教会 Ⅰでは、ヘンリー8世が1534年に「国王至上法」を制定し、カトリック教会からの分離を果たしたところまで書きました。今回はそのつづきです。

 ヘンリー8世の改革は、ローマからの離反を果たしたに過ぎませんでした。ヘンリーの死後、エドワード6世が王位につくと、1549年には「礼拝統一法」が制定され、「礼拝祈祷書」をイギリスにおける唯一の合法的な礼拝様式であると規定しました。しかし、この礼拝祈祷書は、急激な改革による民衆の反発を防ぐために、カトリックの教義をあからさまに否定するものではありませんでした。
 1553年には「四二箇条」が制定されました。この信仰基準は、ルターの「人は信仰のみによって義とされる」という信仰義人説を取り入れるなど、教義面でのプロテスタント体制を確立しました。教会制度に関しては、国王至上主義を掲げています。
 エドワードの死後、ヘンリー8世とキャサリンとの間に生まれた、カトリック信奉者のメアリが王位につきました。メアリは、エドワード治下で制定された宗教に関する法律を全て撤廃しました。また、メアリはスペイン国王フェリペと結婚することで、カトリックの復活と、ヘンリー8世以前の教皇至上主義の復活を望みました。フェリペとの結婚によって外交上の不都合も生じました。当時のヨーロッパでは、フランスとスペインが対立状態にありました。イギリスがスペインと結びつくことは、フランスからの侵略を受ける危機と、スペインの支配下に収まるという二つの危険をはらむものでした。
 当然、国民の激しい反対に遭遇しましたが、メアリは国民の感情を無視し、プロテスタントの迫害に乗り出しました。この迫害の特徴は、犠牲者の多くが一般の庶民や婦人であったことです。メアリ以前は、聖職者や政治家が処刑されることはあっても、一般庶民にその危険が及ぶことはありませんでした。結局、メアリのカトリックへの反動政策は、イギリスをプロテスタントを受容する方向に傾けたに過ぎませんでした。
 メアリの死後、メアリの異母妹であるエリザベス1世が王位につきました。エリザベスは1563年に国教会体制の仕上げとなる「三九箇条」を制定しました。これは、エドワード治世の「四二箇条」を多少、カトリック的に譲歩、改定したものです。「三九箇条」は多くの異なった信仰を持つ者を受け入れようとするために曖昧な形をとっています。ここに、プロテスタント的でもあり、同時にカトリックの要素をも保持するという独自の教義が確立されました。この「三九箇条」は今日でもイギリス国教会の「教義の要綱」となっています。

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天使の壁画

 二回にわたっておつきあいくださいましてありがとうございました。英国国教会成立の歴史は、遠い昔、自身の卒業論文のテーマでもありました。当時は気づきませんでしたが、「曖昧さが万人を受容する」という国教会の体制は、実にイギリス的であると気づきました。

参考文献:自身の卒業論文

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イエスを抱くマリア像

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Bloody Maryというあだ名の由来はこれなんですね!
とっても興味深く読みました。
またこういうのやってください!(笑)

カトリック系大学卒業したものとして、授業で英国国教について学んだことを思い出しました。いつかイギリスの幽霊(タワーに幽閉された人たち)について書いてほしいですね。

catswhiskers 様

こんにちは。最後まで読んでくださいましてありがとうございました。書いた記事を読み返しながら「書くのは楽しいけど、読むのはつまらないかも。」と少し心配をしていました。興味深く読んでいただけたようで大変、嬉しく思います。ありがとうございました。また機会があったらこういう記事も書いてゆきたいと思います。

ふうてんの旅人 様

こんにちは。いつも励みになるコメントを残してくださいましてありがとうございます。今後、もっと勉強して歴史についての記事などにも挑戦してみたいと思います。


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