2017-08

ヴィクトリアン生活

 ある日曜日の出来事でした。出先から戻ると、キッチンとバスルームの天井から水が滴り落ちていました。当然、床もびしょぬれでした。水周りのパイプが破裂したのか、洗濯機の故障か、上の階で何か事故があったことは確実でした。「もぉー。」とため息を漏らしつつ上階のドアをノックしました。上階の住人は、「お風呂のお湯を溢れさせてしまいました。お騒がせして本当にに申し訳ない。パイプや洗濯機の問題ではないのでもう水漏れする心配はないです。水漏れさせてしまったのはたった5分かそこらの話ですから...。」と恐縮するばかりでした。
 モップでキッチンの床を拭いているとき、「ズズズズ。」という蜂の羽音のような音が聞こえてきました。音は水に濡れた照明から漏れていました。水と電気、素人の私でも危険なことくらいは理解できました。とても不安になりました。とりあえず電球を外しましたが、音は止まるどころかだんだん激しくなってゆきました。999(イギリスでは緊急の場合にはこの番号をダイヤルします。110番と119番が一緒になった番号です。)をダイヤルするほどではないので、地元の消防署に電話をして対処法を教えてもらおうと思いました。ネットで調べてみましたが、緊急を要しない消防のヘルプラインは平日の午前8時30分から午後5時が営業時間ということでした。その夜は照明をコントロールするフューズを下ろして寝ました。
 月曜日の朝に消防のヘルプラインに電話をしました。オペレーターに事情を話し対処法を尋ねました。「大家さんが電気技師を連れてきてくれることになってはいますが、それまではどうしたらよいのでしょうか。」と私。「僕は電気技師じゃないから詳しいことはわからないけど、技師の人が点検をしてO.K.を出すまでは照明は使わないほうがいいですね。」とオペレーター。電気技師じゃないからって...。でもあなたは消防でしょうが、と私が思って苦笑していると、「大家さんに技師はいつ来てくれるか確かめたほうがいいですよ。」とちょっとトンチンカンなアドバイスもしてくれました。そして、電話を切るころにはすっかり打ち解けて、「グットラック!」と励ましてもくれました。感じの良いオペレーターさんではありましたが、あまり役に立つ情報は得られませんでした。
 電気技師さんの下した判断は、照明は新しいものに付け替えなければならない、工事が終わるまでは照明をコントロールするフューズを下ろしておかなければならないというものでした。大家さんはビルの管理会社や保険会社やらと交渉を始めました。私の階下のフラットにまで水漏れが及んでいたそうで、思っていたよりも多くの人間がこの問題に関わることになりました。その結果、問題は複雑になり、進展には時間がかかりました。その間、私は大家さんが貸してくれたランプで生活をしました。私は、照明が使えないくらいの不自由ですんでよかったと安堵しました。そのうち、間接照明の生活に馴染んでくるとそれもなかなか良いものだなとすら思い始めました。休日は日が暮れるまでに家事を終わらせて夜は薄暗いランプの下でディケンズを読みました。ヴィクトリア時代にタイムスリップしたような気分でした。一月が過ぎようとしていた頃、新しい照明がつきました。嬉しいような名残惜しいような複雑な心境です。

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