ロンドン危険地域を行く
私がホームステイをしていたある日、ホストファザーのお父さんがサンデーローストの席に招待されていました。彼は昔気質の職人さんの雰囲気を漂わせた小柄なおじいさんでした。
その頃、私は次に住む家を探しをしていて、ローストの席で私が家を探していることが話題になりました。私が「明日、Brixton(ブリクストン)にある物件を見に行くつもりです。」と言うと、おじいさんは顔をしかめて「あそこはやめたほうがいい。危ない。あそこはいけない。」と首を横に振りながら何度も言いました。当時の私はロンドン事情など何も理解していませんでしたが、おじいさんの言葉を信じて、先方に電話をして物件の見学をキャンセルしました。

Brixton へようこそ 落書風にデコレートされたシャッター
ブリクストンはアフリカ系、カリブ系の黒人の多い地域です。この地域にはギャング集団がいくつか存在します。ギャングの仲間になり麻薬に手を染めたり、暴力事件に関わる若者がいるのも事実です。イギリスでは、銃やナイフで殺傷事件を起す若者の多くは黒人の男性です。彼らは大学へ行くよりも刑務所に入る割合の方が多いという統計もあります。
残念なことですが、一部の悪人たちのせいで黒人のコミュニティー全体が負のイメージを背負わされているのが現実です。90年代後半から2000年代の前半にかけて、ブリクストンのあるロンドン南部はロンドンで最も危険な地域であると認識されていました。当時、地下鉄の駅前には警察官が常駐していました。ロンドンのローカルニュースは、殺傷事件の現場の大半をロンドン南部と伝えていました。
しかし、2005年くらいから危険地域がロンドン南部から東部に移行しました。Whitechapel(ホワイトチャペル)駅の前に警察官が配置されるようになりました。ローカルニュースで伝えられる事件現場もロンドン東部であることが多くなりました。その頃の私は東ロンドンに住んでいました。危険地域に住んでいることを自覚し、外出時はいかなる「スキ」も見せないように気をつけてはいましたが、特に危ないと感じることはなかったように思います。

ヘアケア製品を扱うお店 黒人の多い地域にはこういった店が多い
東ロンドンでは危険な気配を感じ取ることはありませんでしたが、今回、ブリクストンを散策しながらすさんだ雰囲気に押しつぶされそうになりました。特に危ない目にあったわけではありませんが、カメラを構えると露骨に嫌な顔をされ、手で追い払われたり人種差別的な発言をされたりしました。許可なく写真を撮ろうとした私のほうが悪いので何か言われたときは謝ってその場から逃げるように立ち去りました。
外出するときはいつもカメラを持参する私ですが、ロンドンの他地域では大抵の店主さんが笑って写真を撮らせてくれます。カメラを構えただけで頷いてくれる人が殆どです。そんな善意に甘えていた自分を少し恥ずかしく思いました。ブリクストンではそんな甘えは通用しません。

アフリカ柄の布を売るお店 この布で民族衣装を仕立てる
ブリクストンには大きなアーケードマーケットがあります。土地柄、アフリカやカリブの食料品やスパイスを扱うお店が多いです。ハラルブッチャー、八百屋さん、魚屋さんなど食品を扱うお店から、布や洋服を扱うお店、雑貨屋さんもあります。周辺の狭い路地にも黒人美容院やらカフェやらがごちゃごちゃと並んでいる場所があります。民族的な雰囲気が私の写真心をくすぐりましたが、カメラを向けられるような雰囲気ではなかったので写真を撮るのは諦めました。
民族衣装で着飾った黒人のご夫人、花柄のワンピースがかわいらしい黒人のおばあちゃん、ラスタファリズムの帽子をかぶったカリブの紳士、ブッキー(賭博場)に集う黒人のおじさんたちなど、絵になる光景がそこらじゅうに散らばっているのがブリクストンです。少し怖いエリアですが、しばらくしたらまた足を運びたくなる、そんな場所です。

その頃、私は次に住む家を探しをしていて、ローストの席で私が家を探していることが話題になりました。私が「明日、Brixton(ブリクストン)にある物件を見に行くつもりです。」と言うと、おじいさんは顔をしかめて「あそこはやめたほうがいい。危ない。あそこはいけない。」と首を横に振りながら何度も言いました。当時の私はロンドン事情など何も理解していませんでしたが、おじいさんの言葉を信じて、先方に電話をして物件の見学をキャンセルしました。

Brixton へようこそ 落書風にデコレートされたシャッター
ブリクストンはアフリカ系、カリブ系の黒人の多い地域です。この地域にはギャング集団がいくつか存在します。ギャングの仲間になり麻薬に手を染めたり、暴力事件に関わる若者がいるのも事実です。イギリスでは、銃やナイフで殺傷事件を起す若者の多くは黒人の男性です。彼らは大学へ行くよりも刑務所に入る割合の方が多いという統計もあります。
残念なことですが、一部の悪人たちのせいで黒人のコミュニティー全体が負のイメージを背負わされているのが現実です。90年代後半から2000年代の前半にかけて、ブリクストンのあるロンドン南部はロンドンで最も危険な地域であると認識されていました。当時、地下鉄の駅前には警察官が常駐していました。ロンドンのローカルニュースは、殺傷事件の現場の大半をロンドン南部と伝えていました。
しかし、2005年くらいから危険地域がロンドン南部から東部に移行しました。Whitechapel(ホワイトチャペル)駅の前に警察官が配置されるようになりました。ローカルニュースで伝えられる事件現場もロンドン東部であることが多くなりました。その頃の私は東ロンドンに住んでいました。危険地域に住んでいることを自覚し、外出時はいかなる「スキ」も見せないように気をつけてはいましたが、特に危ないと感じることはなかったように思います。

ヘアケア製品を扱うお店 黒人の多い地域にはこういった店が多い
東ロンドンでは危険な気配を感じ取ることはありませんでしたが、今回、ブリクストンを散策しながらすさんだ雰囲気に押しつぶされそうになりました。特に危ない目にあったわけではありませんが、カメラを構えると露骨に嫌な顔をされ、手で追い払われたり人種差別的な発言をされたりしました。許可なく写真を撮ろうとした私のほうが悪いので何か言われたときは謝ってその場から逃げるように立ち去りました。
外出するときはいつもカメラを持参する私ですが、ロンドンの他地域では大抵の店主さんが笑って写真を撮らせてくれます。カメラを構えただけで頷いてくれる人が殆どです。そんな善意に甘えていた自分を少し恥ずかしく思いました。ブリクストンではそんな甘えは通用しません。

アフリカ柄の布を売るお店 この布で民族衣装を仕立てる
ブリクストンには大きなアーケードマーケットがあります。土地柄、アフリカやカリブの食料品やスパイスを扱うお店が多いです。ハラルブッチャー、八百屋さん、魚屋さんなど食品を扱うお店から、布や洋服を扱うお店、雑貨屋さんもあります。周辺の狭い路地にも黒人美容院やらカフェやらがごちゃごちゃと並んでいる場所があります。民族的な雰囲気が私の写真心をくすぐりましたが、カメラを向けられるような雰囲気ではなかったので写真を撮るのは諦めました。
民族衣装で着飾った黒人のご夫人、花柄のワンピースがかわいらしい黒人のおばあちゃん、ラスタファリズムの帽子をかぶったカリブの紳士、ブッキー(賭博場)に集う黒人のおじさんたちなど、絵になる光景がそこらじゅうに散らばっているのがブリクストンです。少し怖いエリアですが、しばらくしたらまた足を運びたくなる、そんな場所です。

アフリカ・カリブ系の食品を売るお店
アフリカ・カリブ系のお店には必ず置いてあるヤム
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catswhiskers 様
こんにちは。コメントを残してくださってありがとうございます。
今回、ブリックストンにはもう何年かぶりで遊びに行ったのですが、マーケット内におしゃれな店がたくさんできていてビックリしました。でも、南の怖さは東の怖さとは質が違いますよね。黒人コミュニティーは他人種には排他的な気がします。私は取っ掛りがないので入り込めませんが、中に入ってしまえば居心地がよさそうですけどね。以前、Brixtonに住んでいた日本人の友人(男)はよく黒人の子どもに卵を投げつけられたて憤慨していました(笑)
これも少し昔の話ですが、Peckhamに有名な!?図書館があり、そこに行ったついでに街を散策したのですが、そこらじゅうで人々が言い争いをしていて怖かったです。南でも奥に行けば行く程、濃く深くなっていくのでしょうか...。
今回、ブリックストンにはもう何年かぶりで遊びに行ったのですが、マーケット内におしゃれな店がたくさんできていてビックリしました。でも、南の怖さは東の怖さとは質が違いますよね。黒人コミュニティーは他人種には排他的な気がします。私は取っ掛りがないので入り込めませんが、中に入ってしまえば居心地がよさそうですけどね。以前、Brixtonに住んでいた日本人の友人(男)はよく黒人の子どもに卵を投げつけられたて憤慨していました(笑)
これも少し昔の話ですが、Peckhamに有名な!?図書館があり、そこに行ったついでに街を散策したのですが、そこらじゅうで人々が言い争いをしていて怖かったです。南でも奥に行けば行く程、濃く深くなっていくのでしょうか...。
こんばんは。。
BRIXTONは、私のパートナーのおじさまが住んでいます。(元々先祖はfromカリビアンです)
住人でなければ、
怖くて行きたい雰囲気では、、たしかに、ナイデスネ。。
私はBRIXTON自体には、言った事が無いですが、
そこ行きのバスにのった事があります。それだけでも、
かなり違う国にきたような感覚になりますネ。
ロンドンの南部やアメリカでもいわゆる、
低所得の層が住んでいる地域は、独特の怖さがあります。
日本でも貧富の差が犯罪を呼んでいる気がしないでもないですが、
イギリスは、人権問題が根本にあるので、日本とはまた、違いますよね。。
BRIXTONは、私のパートナーのおじさまが住んでいます。(元々先祖はfromカリビアンです)
住人でなければ、
怖くて行きたい雰囲気では、、たしかに、ナイデスネ。。
私はBRIXTON自体には、言った事が無いですが、
そこ行きのバスにのった事があります。それだけでも、
かなり違う国にきたような感覚になりますネ。
ロンドンの南部やアメリカでもいわゆる、
低所得の層が住んでいる地域は、独特の怖さがあります。
日本でも貧富の差が犯罪を呼んでいる気がしないでもないですが、
イギリスは、人権問題が根本にあるので、日本とはまた、違いますよね。。
サリア様
コメントをありがとうございます。
Brixton は行くととても楽しいところなのですが、少し怖いところが玉に瑕です。Brixton だけではなく、ロンドンには海外に行かずしても異文化体験ができてしまう場所がたくさんあるので楽しいです。異文化エリアは人によってはっきりと好き嫌いが分かれるらしく、嫌いな人はそのような場所には行きたいとも思わないそうです。私は大好きでこういう所ばかりを歩き回っています。ロンドンのいい所?!は、どんなに貧しそうなエリアにもお金持ちの住む一角があり、その逆もありえるところです。散策してみると面白いですよ。
Brixton は行くととても楽しいところなのですが、少し怖いところが玉に瑕です。Brixton だけではなく、ロンドンには海外に行かずしても異文化体験ができてしまう場所がたくさんあるので楽しいです。異文化エリアは人によってはっきりと好き嫌いが分かれるらしく、嫌いな人はそのような場所には行きたいとも思わないそうです。私は大好きでこういう所ばかりを歩き回っています。ロンドンのいい所?!は、どんなに貧しそうなエリアにもお金持ちの住む一角があり、その逆もありえるところです。散策してみると面白いですよ。
Lady masala-sama
ご無沙汰しています。最近多忙で自分の更新もままならず、なかなかお邪魔できないのですが。
うーん!Brixton!
チャオベッラがロンドンに住んでいた頃よりももっとすさんじゃった?のかしら。
友人が住んでいたので何回も行ったことがありますよ。みなさんおっしゃる通り、あの駅に降りたつと他の地区とは全く雰囲気が違うのを感じるけど(あ、Elephant Castle駅周辺にも共通するかも。)、そんな時はいつも、住人になった気持ちで、できる限り堂々と振舞っています。
幸い危険な目にあった事は一度もないですし、住んでいたフランス人やイタリア人の友人たちも全く気にしていませんでしたよ。
それに週末のマーケットはとても楽しかった!みんな明るいし、賑やか。当時まだ他のマーケットではあまり見かけなかった、オクラや山芋を見つけて嬉しかったのを覚えています。
確かに残念なことに犯罪率は当時も高かった地区ですが、すべての住人が悪人というわけではないですしね。
取り急ぎ・・・ もう少し時間ができたらゆっくりお邪魔します。
ご無沙汰しています。最近多忙で自分の更新もままならず、なかなかお邪魔できないのですが。
うーん!Brixton!
チャオベッラがロンドンに住んでいた頃よりももっとすさんじゃった?のかしら。
友人が住んでいたので何回も行ったことがありますよ。みなさんおっしゃる通り、あの駅に降りたつと他の地区とは全く雰囲気が違うのを感じるけど(あ、Elephant Castle駅周辺にも共通するかも。)、そんな時はいつも、住人になった気持ちで、できる限り堂々と振舞っています。
幸い危険な目にあった事は一度もないですし、住んでいたフランス人やイタリア人の友人たちも全く気にしていませんでしたよ。
それに週末のマーケットはとても楽しかった!みんな明るいし、賑やか。当時まだ他のマーケットではあまり見かけなかった、オクラや山芋を見つけて嬉しかったのを覚えています。
確かに残念なことに犯罪率は当時も高かった地区ですが、すべての住人が悪人というわけではないですしね。
取り急ぎ・・・ もう少し時間ができたらゆっくりお邪魔します。
チャオベッラ 様
こんにちは。お忙しいのに、コメントを残してくださいましてありがとうございます。
Brixtonは、きっとチャオベッラさんがロンドンに住んでらっしゃった頃より、クリーンで安全な地域になったと思いますよ。アーケードマーケットにはおしゃれなお店もでき始めています。最近は、駅前に警察官の姿も見なくなりました。
変わったのは「私」でした。少し前まではEastに住んでいて、ラフエリアには慣れていたのですが、引っ越してからはラフな感覚を忘れてしまっていました。最近、また私のライフワーク!?であるロンドン歩きを再開して、危険地域の耐性を思い出しつつあるところです。(笑)もともと、人種の交差するような地域が好きです。
とは言ってもBrixtonは「写真」に対する警戒心はロンドンのどこの地域とも違っていました。とにかく、写真を撮られることが嫌みたいでした。私にとっては写真心をくすぐる風景の連続で撮りたくて撮りたくて仕方がなかったのですが、大部分を諦めざるを得ませんでした。私のカメラはただのデジカメなんですけどねー。
Brixtonは、きっとチャオベッラさんがロンドンに住んでらっしゃった頃より、クリーンで安全な地域になったと思いますよ。アーケードマーケットにはおしゃれなお店もでき始めています。最近は、駅前に警察官の姿も見なくなりました。
変わったのは「私」でした。少し前まではEastに住んでいて、ラフエリアには慣れていたのですが、引っ越してからはラフな感覚を忘れてしまっていました。最近、また私のライフワーク!?であるロンドン歩きを再開して、危険地域の耐性を思い出しつつあるところです。(笑)もともと、人種の交差するような地域が好きです。
とは言ってもBrixtonは「写真」に対する警戒心はロンドンのどこの地域とも違っていました。とにかく、写真を撮られることが嫌みたいでした。私にとっては写真心をくすぐる風景の連続で撮りたくて撮りたくて仕方がなかったのですが、大部分を諦めざるを得ませんでした。私のカメラはただのデジカメなんですけどねー。
危険なのはアフリカの紛争地域からの移民・難民だからでしょうかね?あのへんの紛争の歴史や、ジェノサイドの動画を見ていると、この世に善悪が本当に存在するのか、そんなもの欺瞞なのではないかと思っちゃいます
takayoshi様
こんにちは。はじめまして。コメントを残してくださいましてありがとうございます。
確かにアフリカの紛争地域からの移民、難民の犯罪率は高いと聞きますが、イギリス国内では、低所得者層の多く住む地域は危険だとされています。どこの国でもそうでしょうが、十分な教育を受けられなかった人たちは、自分の子どもたちに善悪の規範などの最低限の良識すら授けることができないことも多いようです。悪循環です。
確かにアフリカの紛争地域からの移民、難民の犯罪率は高いと聞きますが、イギリス国内では、低所得者層の多く住む地域は危険だとされています。どこの国でもそうでしょうが、十分な教育を受けられなかった人たちは、自分の子どもたちに善悪の規範などの最低限の良識すら授けることができないことも多いようです。悪循環です。
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私はずっと東に住んでいて、怖い目にも遭いましたが南の怖さはやっぱり違うと思いました。でも結構日本人多く住んでたりするんですよね。住めば都と彼らは言います。
コミュニティに馴染んでしまえば暮らしやすいのかもしれないですね。。。