ウィーン観光ハイライト

ブルクガルテン モーツァルト像
音楽の都ウィーン。音楽とは無縁の生活をおくっている私たちは、ト音記号が目印、王宮庭園(ブルクガルテン)にあるモーツァルト像を見ることと、お土産にモーツァルトチョコを買うことだけで、旅の音楽部門を終了させてしまいました。
今考えるともったいないことをしたと思います。ウィーン少年合唱団のコンサートに行くとか、せめて教会の無料コンサートにでも行っておけばよかったです。

ナッシュマルクト オリーブの食器がかわいい
ナッシュマルクトは、ウィーン市民の台所、食品市場です。ここを訪れて驚いたことは、生鮮食料品のストールよりもレストランやカフェの数が多いということでした。市場ということで、ごみごみ雑多とした場所を想像していましたが、おしゃれなレストランもたくさんありました。

ナッシュマルクト おいしそうな果物が並んでいる
どこの国でも同じことがいえますが、野菜や鮮魚のストールには、庶民的なエネルギーが満ち溢れています。トルコ系のストールが多かったせいかスパイスの香りがあたりにたちこめていました。オリエンタル(極東)の食材を扱うストールもありました。ヨーロッパにあるオリエンタルストアは、どこもあやしい漢方薬屋さんのように見えます。ここは、市民がエキゾチックな食材を求めにくる場所です。

ベルヴェデーレ宮殿
ベルヴェデーレ宮殿は、トルコ軍からウィーンを救った軍人、プリンツ・オイゲン公の夏の離宮でした。彼の死後は、ハプスブルク家のマリア・テレジアの手に渡りましたが、現在は美術館として使用されています。世界最大のグスタフ・クリムトのコレクションを所蔵していることでも有名です。
外観も美しく、中には素晴らしい絵画を所蔵しているという、恐ろしいほどに贅沢な場所ですが、私たちは、美術館見学はパスして庭園を散策しました。

ベルヴェデーレ宮殿 庭園
宮殿を背に庭を見下ろしたときに一つ思ったことがありました。私は以前、ここに来たことがあるのではないかと。この庭園をどこかで見たことがありました。さて、どこでと考えている私の横で、相棒が「ミュンヘンのお城にもこんな庭があったような」と言い出しました。そうです、ニンフェンブルク城と似ているのです。
後日、ミュンヘン旅行の写真を見ましたが、この二つの宮殿、決して、建物や庭園のつくりが似通っているというわけではありません。全体の雰囲気がそっくりなのです。ヨーロッパの宮殿は、どこも似たような構造になっているということを発見してしまったのでした。

K+K マリア・テレジア
最後に、私たちの泊まったホテルはマリア・テレジアです。女帝が愛したという清潔感あふれる黄色い建物が印象的でした。ミュージアムクオーター周辺にあるこのホテルは、グラーベンなどの観光名所に徒歩圏内でとても便利でした。近所には、シュピッテルベルク地区のレストラン街、スパ(スーパーマーケット)もあります。スタッフの対応もとても感じがよかったです。サウナを無料で使用することができましたが、私が行ったときには他の利用客が一人もいない貸しきり状態で、得した気分になりました。
特筆すべきは朝食ビュッフェです。ハム、チーズ、シリアル、ベーコン、卵など、メニューは一般的でしたが、素材のよさが感じられるおいしさでした。特に、ベーコンとウィンナーはとてもおいしかったです。また、イチゴヨーグルトドリンクがありましたが、まさに「ヤクルトジョア」でした。子どもの頃、大好きでよく飲んでいたジョアのことを思い出し、うれしくて朝食のたびに飲みました。
マリア・テレジアはもう一度、泊まってみたいホテルの一つです。ホテル運に恵まれていることを感謝しつつ、オーストリア旅行記を終えたいと思います。
世界一美しい図書館

プルンクザール 外観
スペイン乗馬学校と隣接するこの建物、間口が狭く地味な外観からは、中のきらびやかさは想像できません。

フレスコ画が美しい館内
図書館に一歩足を踏み入れて最初に目に入るのは、天井のフレスコ画です。宮廷画家ダニエル・グラーンによって描かれたフレスコ画は、1730年に完成しました。世界一美しい図書館とよばれる所以です。

創設者カール6世がヘラクレスの姿に神格化された像
私は無類の本好きです。読むのも好きですが、本に囲まれているだけでも幸せな気分になります。この図書館で働けたら幸せだろうなと、思わずため息をついてしまいました。
それと同時に、20万冊以上という歴史ある蔵書を前にして、売ったらどれくらいの価値があるのだろうという下世話なことを考えるのを止められませんでした。そのようなことを思いながら館内を歩き回ったり、ベンチに座ったりして長い時間をここで過ごしました。

本棚にぎっしり詰まった本、そして梯子...。
この図書館は、博物館としてだけではなく、実際に図書館としての機能も果たしています。蔵書は資料として閲覧することができますが、閲覧者は自由に本を手に取ることはできません。司書が資料を探し出してくれますが、高いところにある本は梯子に登って取り出していました。司書の仕事というのは、イメージよりもずっと肉体労働のようです。ここで働けたら素敵だなと思いましたが、高所恐怖症の私には難しそうです。
ロビン

ロビンは好奇心が強く物怖じしない鳥です。私が公園のベンチに座って本を読んでいると、そばによってきて私を観察しはじめました。そして、カメラを向けるとポーズまでとってくれました。写真を撮ってもらったのが嬉しかったのか、お礼に美しい声で楽しげな歌まで披露してくれました。
ロビンは人懐っこい鳥だからでしょうか、文学作品にもたびたび登場します。イギリス生まれのアメリカ人作家、フランシス・ホジソン・バーネットによって描かれた「秘密の花園」では、園丁のおじいさんとコマドリは仲の良い友だちです。
「小鳥は小さなくびをかしげて、やわらかいつぶらな目でおじいさんを見あげました。黒い露のような目でした。すっかりなついているとみえて、こわがるようすもありません。それからぴょんぴょん地面をとんでは、いそがしそうに土をほじくるのです。種だの虫だのをさがしてるのでしょう。それをみるとメアリは心のなかでみょうな気がしてきました。その小鳥があんまりきれいで、たのしそうで、まるで人間のように思えるからでした。からだはとても小さくてまるくふくらみ、きゃしゃなくちばしをしています。あしもほっそりとしてきれいでした。」
「秘密の花園」より バーネット:作 吉田勝江:訳

ロビンはクリスマスの鳥としても知られています。ツリーのデコレーションやクリスマスカードにはロビンをかたどったものがたくさんあります。
伝説によると、イエス・キリストが十字架に磔にされたとき、一羽のロビンがキリストのそばに寄り添い、彼を慰めるために耳元でさえずったといいます。茶色がかったロビンの胸元は、それ以来キリストの流した血の色で赤く染められたということです。

また、ヴィクトリア朝の郵便配達員は赤い制服を着ており、彼らのニックネームはロビンでした。当時のイギリス社会では、ロビンはクリスマスカードを運んでくれるありがたい存在であるという認識がありました。
イギリス人がロビンに特別な親しみを覚えているのは、このような理由があったからなのですね。家族であたたかいクリスマスディナーを囲んでいるとき、ふと裏庭を眺めるとそこにはロビンがいる。私にはそんなのどかで平和なイメージがあります。
ギラギラ、それは今は昔。
最近は中国からの旅行者も増えています。同じ東洋人同士、一見するだだけでは、私たちと中国人とは区別がつきません。しかし、よく見ると、服装や持ち物に微妙な違いがあります。
中国からヨーロッパ旅行に来られるのは、まだ一部の富裕層に限られているのでしょう。彼らは、とても高価なものを身につけています。男性はブランドのロゴの入ったポロシャツ、女性はバック、そして、レンズが長いカメラ。一目で、お金持ちだとわかります。
一方、日本人観光客、特に若い世代は、近所のコンビニに行ってきますというような気軽な格好をしています。着慣れたTシャツに履きなれたサンダルといった軽装です。よく見ると決して安物ではありませんが、海外旅行に行くのだからという気負いは感じられません。
二十年前、バブル経済絶頂期の日本人観光客は、ちょうど現在の中国人観光客のように、お金に物を言わせたギラギラと気負った格好をしていたのではないでしょうか。私は中国人観光客にバブルの頃の日本人を重ね合わせて、「嫌われて当然」と思いました。
精神的な豊かさは、経済成長がピークを過ぎた頃から培われてゆくものなのかもしれません。私が言うのも生意気ですが、日本は自分たちが思っているよりもずっと豊かな国になりつつあるのではないかと思います。